2017年10月14日土曜日

中盤の中途半端に高いレバレッジ状況において, 近いうちに下げる先発投手を打席に立たせることの費用便益 by MGL

先週の記事の中で書いた、先発投手の巡目でのアドバンテージ低下に少し関連することを、@mitchellichtman (MGL) がツイッターに書いていたのでメモっておきます。
https://twitter.com/mitchellichtman/status/917641501361938432

内容としては、試合中盤の中途半端に高いレバレッジ (Leverage Index, 注1) 状況での投手の打席で、代打を使うか、先発投手をそのままいれるかという話です。

きっかけとしては、2017-10-10のLAD vs ARI
https://www.mlb.com/gameday/dodgers-vs-d-backs/2017/10/09/526489?#game_state=final,lock_state=final,game_tab=play-by-play,game=526489
の6回表3-1でLADがリードした状況で、1アウト3塁でダルビッシュをそのまま打席に立たせた挙句に、裏の先頭打者への死球で下ろすという迷 (?) 采配がありました。で、色々 (注2) あって、「近いうちにベンチへ下げることになる先発投手」を少し高めののレバレッジ状況でそのまま打たせるか否かについて、勝利期待値への影響の大きさに関する大雑把な議論をしていくれています。

まず代打を出すことの利得から。
15-17のデータではこの状況 (1アウト3塁のことでしょう )で投手に代打を出すと、イニング最後までの得点期待値 (RE) が0.19増加。状況 (6回表2点差リード) のLI  = 1.45から0.027 勝利期待値 (WE; 勝率としては2.7%)となる。
(計算としてはたぶん
 REを1勝あたりの得点 (RPW) を使ってWEに変換して、
 REは平均的状況 (LI = 1) を考えているので、
0.19 * 1/10 * 1.45 ≈ 0.027
RPW = 10は明示されていないが勝手に入れた (注3))

次に好投手に代打を出すことのコストについて。
3巡目のダルはgood relieverとあまり変わらないので、ダルビッシュが投げるイニングが減ることのコストは無いと言った上で、
仮に、投げるリリーバーよりも9イニングで0.5失点が減らせる投手であったとしても、
そこから投げられるイニングが0.75とすると (注4)、
REは-0.04
(0.5 / 9 * 0.75 ≈ 0.04)

この場合でもRE -0.04は利益に比べて十分に小さく、このコストで補正しても代打を出すことによるWEは0.21。
(   (0.19 - 0.04) * 1/10 * 1.45 ≈ 0.021  )
勝てばすぐ休みの場合、これ以上の追加的なコストはあまりない。

利得に関しては、もう少しちゃんとした方法でも計算を試していて 、何点入ったかの分布 (0,1,2,3,4...) を調べて、それぞれのWEを計算して合わせると、
代打を使った場合は投手を打たせた場合に比べて、
0.018 WE (15-17)
0.022 WE (10-17)
利得があった。

(要するに、初めの例では平均得点期待値を出してからWEに変換しているが、ここでは記録された残りイニング得点数ごとのWEを出してから平均していると思われる。1度に多く得点をいれるとオーバーキルになりやすそうなので、得点を平均してからWEを計算すると誤差が生じる余地が大きい。)

そして、実際の状況で打席に立った投手は打撃が良い可能性を考えると、平均的な打撃の投手 (ダルビッシュとか) が打席に入ったときのコストはおおまかに
0.02 - 0.025 WE
ぐらいだろうといっています 。
そして、これを0.75イニングの投球で回収しようとすると、能力差としては9イニングあたりで代わりに出てくるリリーバーよりも2失点減らせるだけの差が必要となる、と。
(ちなみに、勝率2.0-2.5%の低下は、試合の前半、同点においてアウトをタダで1つ献上するのに概ね相当する。)

シーズン中ではリリーフの摩耗も考える必要があるかもしれませんが、このへんの数字を桁感として持っておくと、これからのNPBプレーオフで、MGLのイライラを追体験できるかもしれませんね。

_____________________________________________________________________
注1.
1.02のLIの説明
 http://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_index_detail.aspx?gid=10059
LIの詳しい説明 Tom Tango, Crucial Situations in The Hardball Times, 2006.
 https://www.fangraphs.com/tht/crucial-situations/
Win Expectancy Finder - gregstoll.com. LIを計算してくれます
 https://gregstoll.dyndns.org/~gregstoll/baseball/stats.html#V.-2.6.1.5.2010.2016

注2.
色々
 https://twitter.com/mitchellichtman/status/917609270551633922

注3.
RPWについて1.02の説明
 http://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_explanation.aspx?eid=20018
RPWについてFangraphsの説明
 https://www.fangraphs.com/library/misc/war/converting-runs-to-wins/
MLBでの各年度の数値。 FG Guts!
 http://www.fangraphs.com/guts.aspx?type=cn

注4.
このへんの、少しLIが高くても短いイニングではそれほどWEを大きく動かせないというあたりについては、MGLも著者の一人となっているThe BookのChapter 8. Leveraging Relivers. を参照。
T. Tango, M. Lichtman, and A. Dolphin, The Book , 2007, Potomac Books.

0 件のコメント:

コメントを投稿